Blog
湖底 楽曲解説
2023.12.22

我が心の音友よ、アルバム「Another mysterious ticket」はいかがでしたか?

今回は特典のオーディオコメンタリー等、楽曲について語る場所がなかったので、ここで収録曲について想うことを書いてみようと思います。曲作りの過程に興味があったら、ぜひ読んでみてくださいね。

“Bottom of the lake” music commentary

1曲目の「湖底」は、2006年12月22日に発売された、畑亜貴ベストアルバム「浪漫月裸の娘達 ~BEST SONGS ~」に収録されたオリジナル楽曲の再録です。

当時は2部構成の長いイントロを作りました。1部はベースソロから始まるイントロ、タイトルの「湖底」をベースラインで表現しています。渾沌、昏迷、からのイントロ2部へ。不安と嘆きのフレーズです。「嫌だ、嫌だ」という胸の内にある言葉をフレーズに落とし込みました。

その時の元データはSMF(スタンダードミディファイル)のみ発掘。なんと私が最初に作ったイントロは3部構成…すっかり忘れていました。当時編曲してくださった橘尭葉さんとのやり取りを憶えていないので、イントロカットをどちらが言い出したか忘れました(でもたぶん私のような気が)。

ここまでこだわって作ったイントロですが、今回は全部ばっさりカット、「湖底」というタイトル自体に、イントロで描こうとした底に沈んだ絶望が含まれていると思ったから。これは、私の変化というかある意味進化といえるのか。どこを盛るかと同時に、どこを削ぎ落としていくかに気持ちがいくようになったのです。

歌い方も変えました。「浪漫月裸の娘達 ~BEST SONGS ~」を制作していた時は、どこまでウィスパーでいけるかということを追求していたので、囁くように呟くように歌う方向性。今回は、歌い出しをウィスパー寄りにしながら試行錯誤、サビは今自然に出せる声で歌ってみました。

編曲は、西岡正通さん。
私が打ち込んだ元データ(今聴くと色々恥ずかしい)をお渡しして、シンフォニックなテクノ、間奏は別世界をさまよう感じとお願いしました。

そして上がってきたサウンド、歌い出しの解釈から「ああこう来ましたか」と、ときめきました。豪華な重なりから、テクノポップ寄りのイントロ、熱くなりすぎないリズムに支えられ歌ですっとオケが引き静けさからの盛り上がりへ。デジタルとオーケストラ感の割合、そこに絡むハードなギターが絶妙です。

間奏では、湖に舞う白鳥が見えるようなバレエ音楽を感じ、静かな水面に漂う不穏な予感が音になって2コーラス目へ。ティンパニの使い方が、ここで鳴って欲しいというとこを突いてきます。1コーラス目より激しくなったオケからのサビ。そして憂い含んだギターソロからエンディングのストリングスフレーズへ。この流れを聴いた時、最後のフレーズにコーラスを重ねたくなりました。トップの音がGと高いのですが(私の曲で言うと「イバラ・ティアラ」の一番高い音、「消えたいのよ私は」の「は」の音)、声で締めたかった。

この曲で、また新たな西岡君の引き出しを見せてもらったことがとても嬉しく、やはり私が一番好きなのは、音を介したコミュニケーションだと思います。

さらりと書くつもりが、なんだかしつこい文になってしまったような…我が心の音友よ、ごめんなさい。次の曲「風野稀人 (Sasurai ver.) 」はもっと軽くお伝えすべく努めます。

では、また!