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さようなら海星 楽曲解説
2025.05.06

我が心の音友よ、童謡アルバム「さようなら海星」はいかがでしたか?

今までの楽曲解説が意外に好評だったので、今回もどう作っているのかお届けしますね。

なぜ今童謡アルバム?
とは自分でも思いつつも、ずっと続けているゲーム曲のセルフカバー懐古庭園シリーズは次作でおしまい。その前に少し違うことがしたくなった、というのが答えかもしれません。

童謡を感じる自分の曲を集めてアルバムを作るというのは、ずっとやりたいと考えていたことでした。以前NHK音楽番組「みんなのうた」のために「図書館ロケット」を作った時、ミニアルバムとして映像入りのCDを制作。その時のカップリング曲達は配信されていません。それらも含め、また今の解釈で新しく録音もしたいと9曲入りに。

まずはアルバム1曲目「さようなら海星」から書いてみます。

Intro-1A-1B-1A’-Interlude-2B-2A’-C-3A
という、「さようなら海星」の構成。

元となる曲はもう作ってあり、現Interlude(トゥールールットゥットゥですね)をイントロ兼サビとして以下の構成で考えていました。
0C-A-1B-1A’-1C-2B-2A’-2C

テーマは海星ではなく、楓で「悲しむ楓」という仮タイトル。楓の木の元で起こる人の営みの儚さを描こうとしていたのですが、歌詞を見直して夏の終わりから書き出した時、楓から離れて海星に辿り着いてしまったのです。

あくまでひとつの解釈なのですが、地球人のふりをした宇宙人の物語。いつか自分が宇宙から来たことを告白しようと思っているうちに、交流していた相手に裏切られ傷つき、もう地球人を信じるのはやめようと海辺の風景を宇宙の海に重ね、海のヒトデは星が落ちてしまったものではと故郷の星を思う宇宙人。バスで家に帰って、また地球人のふりをしながら生きていく、誰からも本当には理解されない宇宙人。

この時の切ない感情を描くには、元の構成では足りないと新たに加えたのが現C部分。転調して発声も変え世界観を一気に飛ばします。そしてメインのメロディーで感情を、コーラスで情景を歌い、さらに切なさ増量。

その後すっと元にもどして現実を受けいれることを表現、なにごともなかったかのようにAに戻ります。

この発声は「砂海パラソル」の高音を出す時の進化形です。「砂海パラソル」では中域をいつもの声に戻すけれど、今回は戻さずにそのまま歌いきりました。知ってるつもりの自分の声でも研究の余地はまだあるなと。

世界観の転換で、編曲の西岡正通さんの作風を強く感じることができると思います。

1A’からの現Interlude、元C部分のトゥールールットゥットゥ。この後ろに流れる西岡君のギターを追ってみてください。控えめながらも胸に忍びこむフレーズが切ない空気感の元となっています。変化のグラデーションがとても美しく、見事で丁寧な職人技を感じます。現C部分の盛り上げも、低音のシンセがうねうね動くフレーズとギターの絡みが、歌との対比で気持ち良さを増してくれるのだなあと。

Intro-1A-1B-1A’のシンセのフレーズは、元のデモに入れたものも活かしてもらいました。いかにも自分好みのアルペジオ、愛着があります。

西岡君と一緒に音を追求する作業はとても面白く(伝えたいことを汲みとる能力すごい)、ちょっと悔しく(その響かせかたの発想はなかったなとか)、どんなジャンルでも挑戦してくれるのは本当にありがたく(童謡って!)、星に帰りたい宇宙人寄りな私にとっては、いつも頼もしい存在です。

ミュージックビデオでは、想定外の海星型推定宇宙人が登場。楽曲の解釈はなんでもありだなと笑ってしまいました。ぜひ撮影記と共にごらんくださいませ。

我が心の音友よ、レコーディングの写真と共にお届けした楽曲解説、いかがでしたか?

次回は「ひるまのゆうれい」について書きますね。では、また!