我が心の音友よ、童謡アルバム「さようなら海星」の楽曲解説4曲目は、「ひこうきでかえろう」です。
アルバムのために準備した新曲、最初のテーマは「海鳴りは貝の鳴き声」でした。イメージ的には童話「赤いろうそくと人魚 / 小川未明」。
私はこのお話の寂しさと虚しさが好きで、楽曲のテーマにもしています。人の世の悲しさを知っている人がいるということに心慰められるのでしょう。時々読み返しています(そして涙ぐむ)。
1990年代に(おそらく30年以上前)カセットテープで販売していた「赤い蝋燭」は、1999年にディスクユニオンから発売のCD「世界なんて終わりなさい」に収録。
1996年発売のCD「棺桶島」が1999年に再販となった時、特典として「赤い蝋燭 (深海Version)」編曲を変えて収録しました。
久しぶりに聴いて、不穏なシンセのフレーズやコード進行が自分らしいなと。そしてコーラスを最低限にしてみる研究していたことを思い出しました。今となると、もっと入れなよと思いますが、当時の自分の流行だったのでしょうね。
今だったらこう入れるな…とコーラスを考え始めた自分がいて、探究は終わりがないのだなと。探究?性?業? 歌い回しに、この後に来る歌い方癖強ウィスパー探究期の気配を感じます。
振り返りはさておき、曲を作っていくうちに海要素は「さようなら海星」で充分かもしれない、逆に空に感じる悲しさを描いてみたらどうだろうと方向性を変えました。
鳥のように自由に飛べない、帰る場所もない、そして生きているうちにはもう会えないだろう人達との別れ。それが人間として生きるということ。
歌い出しは鳥になれない悲しみを出すために、不安な響きから始まりたい。コードは頭の中で鳴っていますが、本当にそれを自分が求めているかを確認するために、安心する響きを作ってみました。メロディーに対して青字のコード、メジャーコードで明るく落ち着く解釈です。そしてやはり頭の中のコードが求めている響きだと実感したら、赤字のコードに変えて安心を壊します。
コーラスというよりメロディーが3本あるというイメージの歌い出し、オレンジの○、音程が近い音をぶつけて不安な響きを出します。
この不安なコードが元々頭の中で鳴っている音ですが、それは置いといて一度メジャーコードに変換してから元に戻す。手間だし最終的に使われないけれど、この工程で自分が本当に出したい音を確認できるのです。
そもそも、すぐに浮かんだメロディーはまず疑います。最近聴いた曲の一部を無意識に引用していないか、以前作った自分の曲に似ていないか。この検証自体時間がかかりることも多く、結局疑惑ゼロには持ち込めないまま、進めることにはなります。
できれば使って欲しいシンセのフレーズを入れた全体の構成を作り、大まかなコーラスアレンジまで進めた仮歌を入れて、編曲の西岡正通さんに引き継ぎます。
ぜひ注目して欲しいのが、西岡君が追加したコーラス部分。
後ろで聞こえる「あーあーあーあ」と伸ばしているフレーズ、この発想はなかった!嬉しい!(ちょっと悔しい)
メロディー+コーラス+動くコーラスで、音像が立体的になりました。この手法はいつか私も使ってみたい。素敵を再現したい。
自分以外の発想で曲が大きく広がるのが、編曲をお願いする面白さ。
辿り着きたいゴールを目指す時、こんなところにも道があったのかという発見を毎回受けとっています。私も想像力を誘発するような曲作り、頑張ろうって思うのです。
我が心の音友よ、レコーディングの写真と共にお届けした楽曲解説、いかがでしたか?
次回は「雨月物語 (Kitan ver.)」について書きますね。では、また!