我が心の音友よ、童謡アルバム「さようなら海星」の楽曲解説5曲目は、「雨月物語 (Kitan ver.)」です。
楽曲への想いは「Shooting the MV “雨月物語”」をご覧いただくとして、楽曲自体について書いてみます。
Kitan ver.は、思いきって大好きなイントロをカット、歌は1コーラスのみ、ピアノがメインになる形にしてみました。
私にとってこの楽曲はゲーム主題歌でもあり童謡枠でもあります。子供の頃に聞きたかった、そして子供達に聞かせたい。簡単で暗くないけど悲しい旋律を作りたい。謎のような歌詞で3拍子、意味はわからなくていいというか、わからない方がいい。
サビで、オクターブユニゾンのララランコーラスを入れたかったので、高音が高くて苦しいけど、低音が綺麗に出るところを基準にキーを決めました。
歌い方で「明日に近いのは」の「に→ち」にかけて音程を徐々に下げて繋げるということをしています。これはシンセで言うとピッチベンドを下げていくみたいな感覚で、自分の中ではそのまま「ベンド」と呼んでます。管楽器でも使いますね。「昨日を逃げるのは」の「を→に」にかけても同じく。
このベンドは「バイバイ、永遠に。」でも、「健気な自分は消えた」の「は」「た」で使っています。
楽曲の作り方をもっと掘り下げようと思いつつ、ゲームが世に出たのは1996年7月5日。と言うことは、作曲は1995年辺り。この頃の自分は(20代最後…)まだ感性のまま突っ走っていた作り方だった筈。きっと自分がこのゲーム内で聞きたい曲を作ったのでしょう、コーラスについて考えていたことしかよく憶えていませんでした。
編曲は西岡正通さん。
曲が上がってきて、自分に足りなかった成分に気づきました。サビの16分音符で刻むリズムです。3拍子でリズムは8分音符で刻み、大きな流れを出すようにしていたのですが、そこに隠し味が足りなかった。
当時の精一杯なので仕方ないのですが、目指すサウンドに何が必要かは、突っ走るだけではなく一歩引いて冷静に考えると浮かんでくるので、知識も経験もまだまだだったなとお恥ずかしい限り。
西岡君の素敵成分、ぜひ注目して欲しいのが「怯え続ける」の後ろにいる効果音のように、うぃ〜んと音程が上がっていくギター。他の場所にもさりげなくいますが、ここでまず心つかまれます。ピアノがメインのKitan ver.を支えるギターの隠し味。
1曲の中で、どこに何を入れるか、その音がなぜそこに必要なのか。追求し続けた先に現れるサウンドと出会うのは、人生の喜びです。曲に音に真摯に向き合ってくれる西岡君と、まだまだ探究を続けたいと思います。
我が心の音友よ、レコーディングの写真があまりなかったので、MV撮影時の写真も載せてみます。今回の楽曲解説、いかがでしたか?
次回は「消えた星の子守唄」について書きますね。では、また!